大統領専用車両

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義王の鉄道博物館に、2015年に新たに7両の大統領専用列車用の気動車(韓国語で「特別動車」)がお目見えした。

正門前に展示されたのは、「1・2・5・6号特別動車」と呼ばれる、車両番号1,2及び5,6の2両編成2本である。1,2は1969年に日本車両で製造された車両で、製造時は551,552を名乗っていた(1992年10月に改番)。朴正煕大統領政権下で導入された大統領専用車両で、車両設計には様々な防犯対策が施されている。車体の外板は防弾対策で9mmと非常に厚く、また、線路上での防爆対策でボディーマウント構造を採用している。走行機器類の特徴としては、液体式気動車が主流の韓国において、初の電気式気動車となった。最高速度は120km/hを誇る。1両あたりの製造価格は400,000ドルで、当時の日本製気動車(1両あたり60,000ドル)の6倍以上である(当時は1ドル=360円の固定相場制)。

その隣の5,6は1985年に大宇重工業で製造された車両で、製造時は555,556を名乗っていた(1992年10月に改番)。全斗煥大統領政権下で導入された警護員用車両で、設計は先の1,2号をベースにしているが、窓・ドア配置や内装に差異がある。1両あたりの製造価格は7億6000万ウォン(当時主流の優等用気動車「NDC」(9211系)の約2倍に抑えられている)。警護員輸送用のため、基本的に大統領専用車両の1,2号と対になって使用された。

これら4両は2001年まで運用され、同年に登場した「慶福号」(PPセマウルをベースとした車両)に後を継いだ。その後始興車両事業所にて13年間に渡って留置されていたが、突如2013年に鉄道博物館への搬入が発表された。2014年4月に鉄道博物館に搬入され、約1年間の整備を経て2015年5月4日に公開された。韓国鉄道公社選定鉄道記念物に指定されている。

残りの3両は、「ビジネス動車」と呼ばれていたNDCの9222-9322-9422である。1989年に大宇重工業で製造され、1999年に特別動車に改造された。事業用車も兼ねた車両で、2015年2月の引退後に鉄道博物館に搬入された。1・2・5・6号特別動車と同様に、韓国鉄道公社選定鉄道記念物に指定されている。

参考文献:「STEEL CAR」No.109 P.78-81「大統領を乗せて〜韓国・幻の大統領専用車両〜」 (東京都市大学鉄道研究部)

関連ページ:「鉄道博物館(義王)」

鉄道博物館の正門前にて公開された、1・2・5・6号特別動車。
車体はモスグリーンに塗られ、ボディーマウント構造を採用した大きな車体は一目で特別車両を感じさせる荘厳な印象を受ける。その風貌から、現地のファンからは「メギ特動」(メギ=韓国語でナマズ)とも呼ばれている。
展示用プラットホームの両側に並んだ、大統領専用車の1・2号(写真左)と、警護員輸送用の5・6号(写真右)。
展示車両の解説板。内容は以下の通り。

大統領特別動車

国家元帥移動用に制作された特殊車両だ。大統領特別車両(左)は1969年日本(日本車両)で導入され、警護員車両(右)は1985年国内(大宇重工業)で製作された。
2001年まで運用され、2014年5月博物館に移され復元作業を行った。この車両はまた国内に残る唯一のディーゼル電気動車(DEC)で、保存価値が高い。
1号(日本車両製)。
2号(日本車両製)。
先頭部。当時の日本国鉄の特急形電車のように、運転台は高い位置にある。
ドアは収納式のステップと一体型となっており、低床ホームでの乗降に対応している。
台車。
連結部。
1985年に製造された5・6号。1・2号の16年後に製造され、外観は1・2号とほぼ同じながら、窓・ドア配置が一部異なる。
5号(大宇重工業製)。
6号(大宇重工業製)。
運転台。
5号の台車の銘板。
中央の展示用ホーム。4両とも車内に入ることはできないが、ホームから内部の様子を見ることが出来る。
1・2号のドアボタン(車外側・室内側)。漢字で「開」「閉」と書かれている。
1・2号の執務室の内部。豪華な座席と大きな机が配置されている。
1・2号の食堂。
大統領休息空間。
2号の車内の座席配置。ドア付近にデッキはない。
5・6号の車内。警護員輸送用のためか、座席が1・2号のものと比べてグレードが低い。モケットは赤色。
2015年に搬入された、「ビジネス動車」ことNDCの9222-9322-9422。大統領車兼事業用車である。NDCの中で最後まで運行されていた車両で、かつ唯一KORAILの新塗装を纏ったNDCでもある。
9222の前面。
9422。
一部のドアの形状が一般用のNDCと異なる(手前:9222、奥:9322)。
道路側から見たビジネス動車。

関連ページ:「鉄道博物館(義王)」

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