タイ国鉄 スパンブリー線 白昼貸切列車

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タイ国鉄スパンブリー線はノーンプラードゥック〜マーライメーン間78.5kmを結ぶ路線である。列車は1日1往復のみで、早朝にマーライメーン(4:20発)→スパンブリー→フアランポーン(8:05着)、夜にフアランポーン(16:40発)→スパンブリー(20:15着)→マーライメーンの列車が走る(2019年11月現在)。

2019年11月3日、日中に定期列車がないスパンブリー線に日本人鉄道愛好者の方々による貸切列車が運行され、乗車する機会を得た。企画・立案は「ASIA EXPRESS」の増田界将様、手配・運営は清水仁様(https://twitter.com/ZINHs)で、前年度のナムトク線における「特別車両「SRT Prestige」貸切」と同様に参加者を公募されていたため、ありがたく参加させて頂いた。当日の様子を紹介する。

主催者の清水様をはじめ、お世話になった方々に心からお礼申し上げます。

バンコク・フアランポーン駅(クルンテープ駅)に入線する貸切列車。THN型の3両編成が充当された。
フアランポーン駅9番線に入線した貸切列車。
貸切列車のサボ。「専用車」と書かれている。
貸切列車の車内。この車両自体は通常運用にも使用されている(翌日は定期運用に就いていた)が、今回の貸切のために車内・車外共に清掃が行き届いていた。
最後尾の一部はStaff Areaとされた。
THN型(1119)の運転台。THN型は東急車輛・日立製作所・日本車両の3社製(形式名の「THN」は3社の頭文字に由来)であり、日本の車両の運転台と基本構造は類似している。運転台は右側。
助士席側に前面展望動画撮影用のビデオカメラを設置して、いざ出発。
(その成果は、当ページの最後をご覧ください)
バンスー駅。2021年頃の完成を目指して、新駅の建設工事が進められている。この駅が完成すると、バンコクのターミナル駅はフアランポーン駅からバンスー駅に移る。
バンスー駅からは南線を走る。タリンチャン駅までは車窓右手(北側)には建設中のレッドラインの高架・軌道が続く。レッドラインは軌間1,000mm、交流25,000V電化で、可動ブラケットの形状は日本式。
サラヤ〜ナコーンパトム間では珍しく右側の線路を走り(タイ国鉄は原則左側通行)、トンブリー発ナムトク行きの257列車を追い抜いた(追い抜いた後に貸切列車側が信号に引っ掛かり停止し、一旦追い抜かれたものの、その後再度追い抜かした)。
トンブリー発ナムトク行きの257列車とデッドヒート。これぞ双単線(単線並列)の醍醐味?
ナコーンパトム駅の側線に停車。ここで食料調達時間として30分ほど停車した。
ナコーンパトム駅に並ぶ3列車。当駅は2面3線。
ナコーンパトム駅から西側は単線のため、当駅で貸切列車を追い越す43列車(APD型による特急列車)も行き違い待ちをしている。
ナコーンパトム駅で停車中の間に今回の貸切列車を撮影。
スパンブリー・マーライメーン寄り先頭車の1119(日立製作所製)。
2両目の1117(日立製作所製)。
3両目(フアランポーン寄り先頭車)の1134(日本車両製)。
ナコーンパトム駅停車中に特製のサボが設置された。今回の貸切列車参加者の有志が作成したもので、ツアー終了後は希望者にプレゼントされた。
別デザインの特製サボ。
ノーンプラードゥック駅に停車。
ノーンプラードゥック駅で252列車と交換。
ノーンプラードゥック駅の駅舎内にずらりと並ぶ転轍機テコ。今でも駅員さんが手動で切り替えている。
ノーンプラードゥック駅を出発すると、いよいよスパンブリー線へと分岐する。写真手前の分岐はスパンブリー線、そのもう1つ向こうの分岐はナムトク線である。直進が南線。
スパンブリー線へと入った貸切列車(写真左側に南線・ナムトク線の線路も見える)。ここから先のスパンブリー線区間を日中に列車が走るのは非常に貴重である。
スパンブリー線の前面展望。沿線は建物はほとんどなく、田畑が続いている。1日1往復の割に軌道はしっかり整備されており、全区間でPC枕木を使用している。踏切は設置されているが遮断機が撤去されたものも多く、列車は各踏切で警笛吹鳴の上、徐行で通過していた。
駅名標はあるものの、既に休止(廃止?)となっている駅も多い。ノーンプラードゥック〜スパンブリー間には13駅あるが、現在使用されているのは4駅のみ。
最初の停車駅、トゥンブア駅。駅名標とサーラー(タイ語で「簡易休憩所」の意味)が設置されているが、ホームはない。
トゥンブア駅に到着。この貸切列車は、往路はスパンブリー線の各駅に約5分停車し、各駅でのフォトセッションタイムが設けられた。恐らく当駅開業以来、最大の乗降客数?
トゥンブア駅に停車中の貸切列車。
次の停車駅のローンリアンガンビン駅。
ローンリアンガンビン駅に停車。駅の南側で大きな道が横切り、駅前には小さな売店もある。駅名標とサーラーは設置されているが、ホームはない。
ローンリアンガンビン駅に停車中の貸切列車を反対側から見る。
3番目の停車駅のシーサムラーン駅。駅名標しかなく、ホームやサーラーもない。さらに、周辺に建物もない。
4番目の停車駅のドーントーン駅。サーラーはあるが、駅名標もホームもない。
ドーントーン駅の目の前にある踏切。踏切は作動しているが、遮断機は閉まらない。
青空の下、ドーントーン駅に停車中の貸切列車。
スパンブリー駅構内。側線が複数あり、スパンブリー線単独駅では最も規模が大きい。往路は通過。
終点のマーライメーン駅。タイ国鉄の公式時刻表にも掲載されていない駅であるが、1日1往復の定期列車も当駅発着で運行されている。これまでの他の駅と同様、駅名標とサーラーは設置されているが、ホームはない。なお、スパンブリー線内の各駅の等級は「停車場」である(スパンブリー駅のみ「3等駅」)。
マーライメーン駅はスパンブリー駅の1.1km北側にあり、スパンブリー駅よりもスパンブリーの市街地寄りにある(市街地からは数km離れている)。
スパンブリー線の軌道終端部。かつて、この先から北線のバーンパーワーイ駅までの延伸計画があった。
車止めの先にある食堂と、我々が乗車してきた貸切列車。
マーライメーン駅の駅名標。
マーライメーン駅の脇には小さな池がある。
マーライメーン駅の北側に面している国道321号。
復路はスパンブリー駅に停車。
スパンブリー駅はスパンブリー線単独駅の中では唯一の「3等駅」(起点のノーンプラードゥック駅も3等駅)。他駅のようなサーラーではなく、駅舎がある。定期列車は当駅で夜間停泊している。
スパンブリー駅の駅名標(両隣の駅名が書かれている)。
駅端の駅名標。
スパンブリー駅の駅舎。有人駅で、定期列車が停泊するため乗務員の宿泊施設もある。
なお、駅前には何もなく、スパンブリー市街地へのアクセスは終点のマーライメーン駅のほうが便利(当駅は市街地から約4km離れている)。
駅舎内から見た貸切列車。
駅舎内の様子。定期列車は1日1往復しかないが、切符売り場がある。
駅舎内に掲げられている時刻表。内容は以下の通り。

  スパンブリー駅の列車時刻表
列車 運転区間 始発駅発車時刻 スパンブリー駅発着時刻 終点着時刻 ご注意
356
355
スパン バンコク
バンコク スパン
4:20
16:40
4:28
20:15
4:30
8:05
20:15
スパンブリー駅へお問い合わせください
電話 035-440-349(スパンブリー駅)

タイ国鉄公式時刻表に掲載されていないマーライメーン駅のことは記されていない(運転区間がスパン(=スパンブリー)となっている)が、356列車の始発駅が4:20、スパンブリー駅の発着時刻が4:28〜4:30となっていることから、スパンブリー駅の前に別の始発駅があることが分かる。
一方、355列車はスパンブリー駅発車時刻が書かれていないことから、スパンブリー→マーライメーンは非公式の列車扱いかもしれない。
復路はスパンブリー駅からノーンプラードゥック駅までノンストップで運行。ノーンプラードゥック駅で1時間半弱停車した。
ノーンプラードゥック駅ではA.S.社の元JR北海道DD51形(DD51 1137・1142)を見学。約1年ぶりの再訪となったが、車体は北斗星カラーのまま再塗装され(原色より僅かに青が濃い)、さらに前面窓の旋回窓の撤去・ワイパーの設置(暖地仕様化)、スノープラウのゼブラカラー化が図られ、より整備が進んでいた。
今回の貸切列車ツアー参加者のペソギソチャソ様(@pesogisochaso)が製作された、「はまなす」と「北斗星」のヘッドマーク(レプリカ)を掲げて撮影会。往年の晴れ姿がタイの地で甦った。
18:30、ほぼ定刻で終点のフアランポーン駅3番線に到着。
今回も前回の「特別車両「SRT Prestige」貸切」と同様、非常に充実したツアーであった。お世話になった方々に心から感謝申し上げます。
2019年11月3日にフアランポーン(クルンテープ)駅からスパンブリー線のマライメンまで運転された貸切列車の、全区間の前面展望。

この貸切列車は日本人有志(清水様 https://twitter.com/ZINHs )によって、985列車として運転された。スパンブリー線(ノーンプラードゥック〜マライメン)は朝に上り、夜に下り列車が走る1日1往復のみのローカル線で、日中の定期運行は皆無である。この貸切列車は白昼のスパンブリー線を走り、スパンブリー線の貴重な前面展望を撮影することが出来た。主催者の清水様に心からお礼申し上げたい。

停車駅はフアランポーン(クルンテープ)、バンスー、ナコンパトム、ノーンプラードゥックと、スパンブリー線の各駅(スパンブリー駅は往路は通過)。全区間の所要時間は途中の停車時間を含めて4時間42分で、当映像は長時間停車の部分をカットした(カット後:3時間33分)。また、停車駅には駅名の字幕を追加した。

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